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◆紙の本、印刷文化、読書を愛する方へ◆



 昨秋,読書をテーマにしたシンポジウムに参加し,感慨深い思いをしました。
 日本経済新聞社と文字・活字文化推進機構が共催したシンポジウム(2014年9月16日,東京・大手町)で,「人をつなぐ言葉」と題し,作家の辻村深月氏と書評家の藤田香織氏が対談したほか,東芝の西田厚聡相談役と落語家の立川談四楼氏,東京大学大学院の横山広美准教授,アナウンサーの狩野恵里氏がパネル討論しました。それぞれの読書体験談に始まり,形のある紙の書籍の信頼性,さまざまな場面で変わるコミュニケーションのあり方,正しい情報を自分で選択して物事を判断することの難しさや,読書の重要性などといった話題が出ました。
 お話を聞いていると,どの方も本を読むことをそれぞれのスタイルで楽しんでおられ,読書にはただ本の内容を問うだけでなく,読む行為そのものにも驚きや感動を伴い,人生を豊かにする思い出をつくる力があるのだなと感じました。
 
 さてここでご紹介したいのが,小社書籍『紙と印刷の文化録 –記憶と書物を担うもの–』です。紙を専門に研究してきた筆者が,「本格的な電子書籍の攻勢を前に,果たして紙は生き残れるのか?」と,紙媒体の将来を問う好著。内容は,紙と印刷の歴史や技術から経済まで幅広い内容で構成され,電子書籍と紙の書籍の攻防を時事問題や社会情勢にも触れながら見つめています。
 
 今後,読書という文化はどのようになるのでしょうか。先のシンポジウムで日本経済新聞社の平田保雄会長が挨拶し,戦後の日本で文庫本ブームが起こったことに触れ,「第二次世界大戦に日本が敗れた一因は,文化力の低さにあった。敗戦後に文庫本がたくさん出版されたのは,それを悔やんだ当時の出版人の心意気だった」と仰っていたのが印象的でした。
(2015.1.6)

 
『紙と印刷の文化録 -記憶と書物を担うもの-』
尾鍋史彦 著  四六判・上製本 288ページ 本体3,800円+税

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