週刊『印刷雑誌』

週刊『印刷雑誌』1巻10号 2010年7月12日
Japan Printer weekly vol.1, no.10

本メディアは,紙メディアである月刊『印刷雑誌』と連携し,月刊誌では遅くなってしまう情報を中心に掲載します。グラフィックアーツに携わる方々のお役に立てば幸いです。

電子出版関連ビジネス盛ん
大日本印刷と凸版印刷が電子出版制作・流通協議会を設立
 大日本印刷と凸版印刷は,日本の電子出版ビジネスの成長と健全な発展のための環境の整備を目指し,出版業界との密接な連携のもと,電子出版制作・流通関連事業者による協議会「電子出版制作・流通協議会」(任意団体)を7月27日に設立すると発表した。電子出版ビジネスの発展に必要な課題の整理と検証,配信インフラ基盤に関わる問題とその解決,市場形成における検証や電子出版振興に関わる提言等,出版関連団体や権利者および行政機関との連携をはかることにより,電子出版の発展に貢献する活動を目指していく。
 まずは,両社が発起人となり,電子出版ビジネスの発展に関心があり,設立趣旨に賛同する企業の参加を広く募る。設立準備事務局は電通で,7月27日に設立総会を開く。

大日本印刷,著作権契約管理業務支援と国内最大の電子書店オープン
 大日本印刷は,電子出版などのコンテンツの著作権契約管理業務を代行する,クラウド型の「ビジネスプロセス・アウトソーシング」サービスを本年秋より始める。書籍・雑誌の電子出版コンテンツや映像,ゲーム,キャラクターなど,出版社が管理する多様なコンテンツの著作権契約,原稿料契約をデータベース化し,その契約に基づき,印税計算から支払通知書の作成・発送業務までを同社が受託する。既存の出版物の著作権契約も,過去に遡って同データベースへ取り込むことができる。
 また,大日本印刷と子会社のCHIグループは,10万点のコンテンツをそろえた国内最大級の電子書店を今秋開設すると発表した。CHIの子会社で図書館流通センターが運営するオンライン書店「bk1」と連携し,今後さらに大日本印刷グループの丸善,ジュンク堂,文教堂などの書店との連携も進めていく。

凸版印刷,電子出版時代の新ビジネスモデルを創出
 凸版印刷は,電子出版時代における出版業界全体の支援を図る施策「出版イノベーション2010」を策定した。これに伴い7月1日,電子出版事業を総合的に支援する組織「デジタルコンテンツソリューションセンター」(仮称)を設立した。また,印刷物と電子出版コンテンツの並行制作ライン「コンテンツファクトリー」を拡充し,さまざまな形態のコンテンツ配信に対応する。さらに,読者の要望に合わせた形態でコンテンツを配信するサービス「オープン配信プラットフォーム」や広告の配信体制を構築する。同社は同施策を通じ,電子出版関連事業で2015年度に500億円の売り上げを目指す。

講談社,電子と紙,イベントの3メディアが基軸の新会社を設立
 講談社は7月7日,同社が100%出資する「(株)星海社」を4月28日に設立したと発表した。新会社は電子媒体,紙媒体,イベントメディアの3事業を基軸に,Webサイトを中心とした出版の確立を目指す。本年9月にはWebサイトをプレオープンして小説や漫画,Webならではの新コンテンツを無料公開するほか,11月より文芸主体の新レーベル「星海社FICTIONS」や文庫,コミックス,新書のシリーズを刊行する。
 また,メディアと読者の交流を図る拠点「星海社BOOKCAFE」を2011年内に開設予定。代表取締役社長は講談社で販売担当者の杉原幹之助氏,代表取締役副社長は同社の編集者の太田克史氏。

廣済堂,iPhone,iPad向け電子書籍の書店アプリ開設
 廣済堂は,今月末を目処に,iPhoneとiPad上で電子書籍書店アプリ「Book Gate」を開設する。すでに51の出版社,コンテンツホルダーと契約している。

コダック,電子書籍データ自動作成ソリューション発表
 コダックは,従来の印刷物製作工程と電子書籍の製作工程を一元化する,電子書籍データ自動作成ソリューションを,7月8日〜10日に東京ビッグサイトで開催されたデジタルパブリッシングフェアで発表した。電子書籍の標準規格ePUBが策定されたが,日本語組版への対応の遅れやデザインの再現性など課題も多く残されており,電子書籍の市場に参入するうえでの障壁となっている。この問題解決を図るため,ジーティービーと共同で,印刷用の中間ファイルから電子書籍データを自動的に作成するソリューションを制作した。

 

仙台でSOPTEC展閉幕
 7月9日・10日,仙台卸商センター産業見本市会館で「SOPTEC(Solution Of Printing Technology Conference)とうほく2010」(主催:東北地区印刷協議会,同展実行委員会)が開かれた。18の講演会があり,記念講演として「博進堂の取り組みから学ぶ地方印刷会社の“和略”」があった。
 展示会は,37社・団体が,自社の商材やソリューションを展示した。その中で仙台のユーメディアは,小森コーポレーション,東洋インキ東北と共同で,オゾンレスの「ハイブリッドUV」印刷などを提案した。また秋田の秋田印刷製本は,「あきたこまち」米を,自社で企画,デザインしたパッケージによりブランド力を向上させるビジネスモデルを提案した。

竹橋プリンティングセンター,印刷の役割と発展を学ぶ
 竹橋プリンティングセンターは7月5日,東京・一ツ橋の如水会館でコミュニティスクエア交流会を開いた。同交流会5周年記念とし,5年間委員長を務め,先般BS朝日放送で「MAESTRO刷師 松井勝美の世界」として放映された松井勝美委員長から「心に響く営業だと価格を下げる必要はない。その代わり,その印刷物が役に立たなければならない。目指すは印刷産業の発展」などの心意気を学んだ。

小森すずらん会,札幌で開催
 小森すずらん会は7月7日,札幌パークホテルで講演会を催した。「突発修繕から計画修繕へ:保全形態とKPM診断から見るSHINKA」として小森コーポレーションの小林芳徳氏が保全の方式から診断方法,具体的活動例,損失や効果の数字までを解説した。同社の林兼明氏は「工場改善による生産性向上」として,5Sの必要性や4W(在庫,動作,運搬,もの探しのムダ)の削減,工場内の整頓状況の具体的な好例・悪例,刷り出し30枚で標準カラーを再現する方法などを語った。基調報告として同社の小森善治社長は,世界の印刷市場予測を話した。
 「やったらやれるで:“SHINKA”するリーダーシップ!」と題し,オフィス・なかがわ代表の中川政雄氏が,大手銀行と信用金庫を例に,大手ができないことを行うこと,“どうせ”(やってもしょうがないと思っている)を背負っている人へは“やってみないとわからない”と思わせる,前向きの姿勢が重要と熱く語った。

リソピアクラブ,会長交代
 三菱重工業製品のオフ輪ユーザー会「リソピアクラブ」が7月9日,東京・品川の開東閣で開かれ,会長が伊藤勝氏から佐川印刷会長の木下宗昭氏に交代した。講演会も催され,三菱史アナリストの成田誠一氏が,坂本龍馬と岩崎弥太郎をテーマに,現在放映中のNHK大河ドラマ「龍馬伝」はあくまでもドラマであり,史実とは異なることを話した。

モリサワ会,東京で開催
 モリサワ会は7月6日,東京・九段下のホテルグランドパレスで総会と講演会を開いた。役員改選期だが,全役員が留任した。
 講演会では「電子書籍市場の現状と課題」として(株)hon.jpの落合早苗社長が,電子書籍の定義から携帯電話向けの電子コミックが市場を牽引していること,電子書籍に関し2大取次があること,関連する米国企業の動向までを紹介した。また,モリサワの佐藤弓子氏が,同社の電子書籍ソリューション「MCBook」を説明した。このソリューションは,電子書籍用に既存コンテンツを変換できたり,携帯電話用書籍を作成したりできる。

drupa2012出展社募集中
 メッセ・デュッセルドルフは7月8日,世界最大の印刷機材展drupa2012(ドイツ・デュッセルドルフ,2012年5月3日〜16日)の概要を発表した。来場者40万人を見込み,プリンタブルエレクトロニクスやメディアアプリケーション,持続可能性環境対応をテーマにしたゾーンを設ける予定。出展の締切は今年10月31日。

DM協会,全国大会開く
 NPO法人ダイレクトメール推進協議会は7月7日,東京・新富の日本印刷会館で全国大会を開いた。Webとダイレクトメールの融合をテーマにした基調講演では,桜井孝至氏が「情報が氾濫する現在,様々な選択肢の中で答えや方向を示す役割が求められる」と話し,1つのイベントや製品を売るさい,DMや紙媒体,Webの性質によって活用する時期を示し,印刷企業の持つ力を効果的に使用すべきだと述べた。また,事例として発注企業側から建築やパチンコ業界でのチラシの効果が発表された。

ミューラー・マルティニ,PUR製本の講演会
 ミューラー・マルティニジャパンは7月9日,東京・板橋のハイライフプラザでPUR製本技術に関するセミナーを催した。日立化成ポリマーとヘンケルジャパンがPUR糊の組成や特徴,現在の市場と技術動向について話し,実用事例として日本紙興の坂口清隆氏と小学館の宮下雅之氏が講演した。また,ミューラー・マルティニジャパン本社にて実機を使ったオープンバック製本の実演も行った。

モトヤ,自社の強みをアピール
 モトヤは7月8日・9日,東京・秋葉原のアキバ・スクエアで内覧会を開いた。印刷企業,印刷関連メーカー合わせて57社が,UV加工や短納期,特殊製本など,自社の得意とする製品やサービスを紹介した。

メッセ・デュッセルドルフが印刷事情の講演会
 メッセ・デュッセルドルフ・ジャパンは7月8日,東京・紀尾井町のホテルニューオータニで日本とドイツの印刷事情に関する講演会を開いた。欧州のメディアの変容や欧州の印刷機械産業および市場動向,新規の印刷産業ビジネスの展望などの講演があった。またハイデルベルグ・ジャパンの山本幸平社長,三松堂印刷の矢部一憲社長,ミヤコシの宮腰巌社長を交えてパネル討論も行った。

ダイナコムウェア,TrueTypeフォントの新製品発表
 ダイナコムウェアは,新発表の古印体,堂堂体,天祥体,爽体体の4書体含む和文フォント258書体のほか,欧文フォント3007,中国語フォント12,数字フォント320など合計3676書体を収録した「DynaFontプラチナパックTrueType for Windows」を7月23日に発売する。初回5000本は,手書き文字をそのままフォントにできる「かんたん手書き工房」付き。13,440円。

書協と日印産連が,造本装幀を表彰
 日本書籍出版協会と日本印刷産業連合会は,7月8日〜11日有明の東京国際展示場で開かれた東京国際ブックフェア内で,「造本装幀コンクール」入賞,優秀作品を展示し,10日に同会場内で表彰式を行った。文部科学大臣賞『瀧口修造1958』,経済産業大臣賞『溶游する都市』,東京都知事賞『西洋美術書誌考』が受賞した。

本の学校,書籍の未来を語る
 リードエグジビションジャパンと本の学校は7月10日,東京国際ブックフェアで「本の消費現場で何が起きているのか」をテーマに特別講演を行った。編集者の仲俣暁生氏を司会に,印刷博物館の樺山紘一館長,星海社の太田克史副社長,丸善お茶の水店の草K主税店長が登壇し,電子と紙の書籍が人の糧となるには,どのような経緯をたどるのか,書店で本を選ぶ楽しさ,Web上で手軽に作品に触れる良さそれぞれの特徴を踏まえながら,今後の知の行方を語った。

2010年度「広告電通賞」受賞作を紹介
 新橋のアド・ミュージアム東京は7月25日まで「広告電通賞展」を開いている。同賞の2010年度に受賞した8種目41部門合計87作品を紹介。製造を白熱電球からLED電球に切り替えた東芝の新聞広告や,B3ワイド判用紙を3枚使った年賀状の広告ポスター,ジーンズを使った車内広告,ウイスキーのラジオCM,キャンペーンの展開方法を示したパネルなど,さまざまな広告を見ることができる。

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週刊『印刷雑誌』1巻10号
2010年7月12日発行
編集長兼発行人:中村幹
発行所:株式会社印刷学会出版部



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