週刊『印刷雑誌』

週刊『印刷雑誌』1巻11号 2010年7月20日
Japan Printer weekly vol.1, no.11

本メディアは,紙メディアである月刊『印刷雑誌』と連携し,月刊誌では遅くなってしまう情報を中心に掲載します。グラフィックアーツに携わる方々のお役に立てば幸いです。

大日本印刷の出版関係ビジネス
 大日本印刷は2010年の国民読書年に向けた文化活動の一環として,本棚をテーマとした新しい読書体験を生活者に提供する企画「本棚と私たち」を始めた。7月17日〜10月31日に東京・秋葉原のアートスペース「3331 Arts Chiyoda」内に「読書コミュニティスペース」を開設するとともに,編集工学研究所と連携し,ウェブサイト「本棚と私たち」を開設している。
 読書コミュニティスペースでは,佐野元春氏,日比野克彦氏,武田双雲氏などの著名人や,さまざまな分野の専門家が選んだ本を陳列した本棚「私が見たいあの人の本棚」,「アーツ千代田3331で見る現代アート・写真・デザイン・webを知る200冊」などのほか,「親がつくる子どものための本棚」のような家族向けの展示もある。さらに電子書籍専用端末を使って閲覧できるコーナーも設けており,紙の書籍と電子書籍を両方楽しめる。
 ウェブサイトでは,生活者がウェブサイト上で好きな本を選んでオリジナルのバーチャル本棚を作り,公開することができるなど,本棚を話題として生活者同士が意見交換できる場を提供する。

セキュリティ機能とデザイン性を両立
 第一印刷所は,地紋の文様を工夫してベタや多色刷り,インキ濃度の高い印刷でなくても文字の透けを防げる“シークレット地紋”(隠し地紋)を使った封筒や圧着ハガキ,クリアファイルなどを製作している。セキュリティ性能に加え,薄い色の地紋の上からさらに印刷が可能なため,デザイン性という付加価値が評価されて金融機関や官庁,病院などでの採用が多い。また同社は地球環境や社会環境への意識が高く,植物インキの使用やユニバーサルデザインも取り入れている。

ソニーとジャパン・スリーブ,東洋インキの高感度UVインキ採用
 ソニー・ミュージックコミュニケーションズ(SMC)は,東洋インキ製造の高感度オフセットUVインキ「FlashDry HS シリーズ」をSMCのCD・DVDジャケットなどの印刷に採用した。印刷はジャパン・スリーブが手掛ける。同インキは,従来のUVインキを高感度化して印刷機のUV照射量を削減し,印刷機では従来の約3分の1,室内空調では約2分の1の電力消費での印刷を可能としており,印刷工程における二酸化炭素排出量を59%削減するとしている。また色再現性や光沢などの品質が,SMCが推奨するカラーマネジメントシステムに準じている。

リョービ,厚紙対応のLED-UVシステムを開発
 リョービはLED-UV印刷システムの搭載モデルを,菊全判寸ノビ機RYOBI 1050シリーズに拡充するとともに,厚紙やプラスチックシートなどの厚紙印刷への対応を強化したシステムを1050シリーズ用に開発し,販売を始めた。LED-UV乾燥装置の直下に用紙の吸着機能を備えた渡し胴を採用し,搬送中の用紙を渡し胴に密着させることで,高速運転時に用紙がLED-UV乾燥装置に接触することを防止する。用紙厚は最大で1.0mm(オプション)に対応する。

モリサワ,電子書籍ソリューションを発表
 モリサワは,同社フォントと組版エンジンを利用して電子書籍アプリを制作する電子書籍ソリューション「MCBook(エムシーブック)」を7月20日から発売する。同社組版ソフトMC-B2やAdobe InDesignで作成された組版データを活用することにより,簡易的に低コストで電子書籍アプリを制作でき,ユーザーの初期導入費用を抑えることができる。同ソリューションは,電子書籍コンテンツ変換ソフト,iPhoneアプリ生成ソフト,校正支援ソフトから構成され,表示用のビューアも一体化している。

モリサワとヤッパが電子書籍で提携
 モリサワとヤッパは7月16日,電子書籍事業で提携した。モリサワの電子書籍ソリューション「MCBook」と,ヤッパの雑誌を誌面そのままのレイアウトで表現できるソリューション「SpinMedia」を合わせ,書籍・雑誌ともに対応するソリューションとして出版社に提供する。9月から日経BP社の電子書籍書店「日経BPストア」での利用が予定されている。

VPJターボサーバーと大日本スクリーンTrueflowが連携
 ビジュアル・プロセッシング・ジャパンと大日本スクリーン製造は,両社がそれぞれ販売するプリプレスワークフローサーバ「ターボサーバー」とワークフローRIP「Trueflow SE」を連携するプラグイン「TS EQ Connect(イーキューコネクト)」を開発した。この連携によりプリプレスからアウトプットに至る総合的なワークフローの生産性が高められ,手作業による下版ファイルの保管・管理,再版・改版時のファイル検索といった余剰作業や,それにともなう作業ミスなどを改善できる。

コニカミノルタ,蛍光を加味する測色機発売
 コニカミノルタセンシングは,任意の光源下で紙の蛍光を加味した測色ができるハンディ型の蛍光分光濃度計「FD-7」と「FD-5」の2種を来年1月から発売する。紙をより白く見せる蛍光増白剤の成分を加味することで,印刷物の色の数値化をより正確に行える。同機能の開発は世界初としている。

日本印刷学会,夏期セミナー開催
 日本印刷学会は7月16日,東京・新富の日本印刷会館でセミナーを開いた。「メディアはどう変わるのか」をテーマに,電子書籍などの電子媒体の隆盛時代における印刷産業のあり方や新聞業界の動向,電子ペーパー技術の現状,IPEX展(5月に英国で開催)から見た出版・印刷業界の動向,印刷産業の低炭素社会への取り組みについて6つの講演があった。

JPAフォーラムで価値創造印刷物を紹介
 日本プリンティングアカデミーは7月15日・16日,東京・小石川の同校でフォーラムを催した。人のコミュニケーション作りを支援する価値創造印刷物として,開くと立体的に立ち上がるDMや立体に飛び出す絵本,スクリーンUV厚盛りによる点字印刷,後加工を工夫したCDジャケットなど,各印刷会社のサンプルを紹介した。特別講演として3D画像制作についてニコールアンドアソシエイションの宮尾昌隆氏が,認知科学における紙メディアの本質と可能性について東京大学名誉教授の尾鍋史彦氏が講演した。

POD市場の動向を分析
 インフォトレンズは7月15日,八重洲の東京ステーションコンファレンスでPODに関する講演会を開いた。日本の広告市場のクロスメディア化傾向を踏まえた印刷物の伸びの変化やインクジェット,電子写真方式デジタル印刷機の伸び率のほか,IPEX(5月に英国で開催)に出品されたデジタル印刷機を中心とした製品群の動向が報告された。また,キヤノンのオセ買収とその効果,今後の動向予測などの分析も紹介した。

開館10周年記念企画展始まる
 凸版印刷印刷博物館は10月に開館10年を迎えることに先駆け,7月17日〜9月23日に同館で「印刷博物館10年のあゆみ」展を開く。来場者調査で再展示の希望の高かった書物,版画,ポスター,印刷機器など約80点と手動印刷機スタンホーププレスでのワークショップも行う予定。

ラベル専門イベント今週開催
 国内最大のラベル専門展「ラベルフォーラムジャパン」が7月22日・23日,東京のベルサール汐留で開かれる。ラベル印刷会社や発注側のブランドメーカー,ラベル資機材メーカー各社が講演するほか,約70社がラベル印刷機,後加工機,検査装置,乾燥システムなどを出品,実演する。

出版学会,勉強会盛ん
 日本出版学会は,8月4日18時30分から東京・神田小川町の八木書店で,出版流通研究部会を開く。「出版流通はどのように変わるのか:近刊情報集配信センター構想とその活用」と題し,講談社の永井祥一氏が話す。会員無料,非会員500円。
 さらに日本出版学会は,8月6日18時30分から大阪市茶屋町の関西学院大学大阪梅田キャンパスで関西部会を開く。「最近の図書館における電子化の動向:大学図書館の再定義とその編集機能」と題し,佛教大学図書館の飯野勝則氏が話す。会員300円,非会員500円。
 また,日本出版学会は学会誌『出版研究』41号の寄稿(論文,研究ノート,書評など)を募集している。締切は9月30日。問合せは,同学会。http://www.shuppan.jp

画像科学奨励賞を公募
 公益財団法人コニカミノルタ科学技術振興財団は新しい画像技術の探求を基本テーマに,「光と画像に関する材料及びデバイスの研究」「光と画像に関するシステム及びソフトウェアの研究」「光と画像に関するその他の先端的な研究」の3分野で研究テーマを募集し,奨励賞(副賞1件100万円)と進歩賞(副賞1件50万円)ともに4件程度を選出する。締切は9月30日。詳細は,http://konicaminolta.jp/pr/foundation/

◇広告◇
最新刊『電子出版の構図』植村八潮著2100円,『印刷技術 基本ポイント:枚葉オフセット印刷編』日本印刷産業連合会著1050円,『新聞製作入門』熊取義純著1470円 絶賛発売中

週刊『印刷雑誌』1巻11号
2010年7月20日発行
編集長兼発行人:中村幹
発行所:株式会社印刷学会出版部



go home

(C)2010 Insatsu Gakkai Shuppanbu Ltd.
All rights reserved.